
許されようとは思いません(新潮文庫)
芦沢央
新潮社 / 2019-06-01
この本について
人と関わっていると、相手の「沈黙」や「間」が妙に胸に残ることがあります。怒っているのか、失望されたのか、自分が勝手に怯えているだけなのか。その曖昧さに振り回されてしまう瞬間って、誰しもありますよね。僕もそうで、あとになって「あの時の顔、どういう意味だったんだろう」と考え続けてしまうタイプです。 芦沢央さんの『許されようとは思いません』は、まさにその“胸のざわつき”を形にしたような短編集でした。読者の方が保存していた抜粋には、息が詰まるような気配や、言いかけた言葉の重さ、誰かの視線を意識して一歩が出なくなる瞬間がたくさんあります。読みながら、自分が抱えている小さな後ろめたさや、言葉にできない不安にそっと触れられるような感覚がありました。 特に効いたのは、登場人物たちが「正しさ」ではなく「その場どうしようもなかった感情」によって動いてしまう描写です。理屈では説明できないけれど、あのとき心臓が跳ねてしまった、とか、声が尖ってしまった、とか、そういうリアルさに自分の経験が引き寄せられる。そして、そのズレや違和感が物語の中で少しずつ輪郭を持っていくと、自分の曖昧な感情まで整理されていくような気がしました。 感情の揺れを「なかったこと」にせず、そのまま見つめてみたい人に刺さる本だと思います。読後にスッキリするというより、見落としてきた小さな痛みに名前をつけてもらえるような一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの17%が集中しています。
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