
遅いインターネット (NewsPicks Book)
宇野常寛
幻冬舎 / 2023-04-06
この本について
社会やネットの分断について考えるとき、「なんでこんなに話が通じないんだろう」と立ち止まる瞬間がけっこうあります。正しさで説明すれば届くはずなのに、まったく響かない。むしろ噓でも魅力的な物語に人が流れていく光景を前に、自分の感覚のほうがズレているのでは…と不安になることもあります。 『遅いインターネット』は、この“噛み合わなさ”を、感情論でも精神論でもなく、世界の構造そのものから丁寧に読み解いてくれる本でした。Anywhere/Somewhere という対立の見方は耳慣れた話ではあるけれど、宇野さんの説明はその奥の「なぜそれが起きるのか」まで踏み込んでいて、壁を作りたい人々を“愚か”と切り捨てる態度こそが分断を深めている、という指摘にハッとさせられます。政治と経済の速度差や、「自分の物語」への欲望がどう世論を揺らすのかも、日常の景色とつながる形で語られていて、無理なく腹に落ちました。 いまのネット空間で何が起きているのかを、単なる善悪ではなく、仕組みとして理解したい人に向いている本だと思います。正しい答えを急ぐより、一度立ち止まって世界の見え方を組み替えたい、そんなときに静かに効いてくれます。
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