
スティル・ライフ (中公文庫)
池澤夏樹
ボイジャー / 2015-07-01
この本について
ふだん仕事でも生活でも、「何から手をつければいいんだろう」と立ち止まる時間が増えている人って多いと思います。焦らなきゃいけない気はするのに、遠くを見ようとすると視界が白んで、かといって目の前の選択にもいまいち確信が持てない。僕自身もそのど真ん中にいます。 池澤夏樹『スティル・ライフ』を読み返すたびに思うのは、ここに描かれている主人公の“距離の取り方”が、あのモヤモヤに少しだけ風を通してくれるということです。世界を真正面から押し返そうとするのではなく、一歩引いた場所から「世界と自分が並んで立っている」と捉える視点。あるいは、目の前の意味づけをいったん保留して、形そのものを眺める静けさ。そんな感覚が、決められない自分を責める気持ちを弱めてくれます。 もう一つ救われるのは、「とりあえず迷っている方を選んだ」という主人公の姿勢です。社会が早く決めた人を優先するのは事実としてあるけれど、それでも自分が納得できる速度で歩くことを許してくれるような描写が多い。雪に満たされた宇宙の中で、世界が上へ上へと昇っていくイメージのように、自分が止まっているように見える時期にも、実はゆっくり進んでいるのかもしれないと思えるんです。 自分のペースで考えたいのに、世界の速度に合わせられないと感じている人には、とても静かに刺さる本だと思います。
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多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの23%が集中しています。
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