スティル・ライフ (中公文庫)

スティル・ライフ (中公文庫)

池澤夏樹

ボイジャー / 2015-07-01

累計読者数7
平均ハイライト数 7件/人
推定読了時間 約53分
star総合評価 40/100
boltライト読書型

この本について

ふだん仕事でも生活でも、「何から手をつければいいんだろう」と立ち止まる時間が増えている人って多いと思います。焦らなきゃいけない気はするのに、遠くを見ようとすると視界が白んで、かといって目の前の選択にもいまいち確信が持てない。僕自身もそのど真ん中にいます。 池澤夏樹『スティル・ライフ』を読み返すたびに思うのは、ここに描かれている主人公の“距離の取り方”が、あのモヤモヤに少しだけ風を通してくれるということです。世界を真正面から押し返そうとするのではなく、一歩引いた場所から「世界と自分が並んで立っている」と捉える視点。あるいは、目の前の意味づけをいったん保留して、形そのものを眺める静けさ。そんな感覚が、決められない自分を責める気持ちを弱めてくれます。 もう一つ救われるのは、「とりあえず迷っている方を選んだ」という主人公の姿勢です。社会が早く決めた人を優先するのは事実としてあるけれど、それでも自分が納得できる速度で歩くことを許してくれるような描写が多い。雪に満たされた宇宙の中で、世界が上へ上へと昇っていくイメージのように、自分が止まっているように見える時期にも、実はゆっくり進んでいるのかもしれないと思えるんです。 自分のペースで考えたいのに、世界の速度に合わせられないと感じている人には、とても静かに刺さる本だと思います。

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書籍情報(出版社紹介・目次)expand_more

出版社による紹介

雪が降るのではない。雪片に満たされた宇宙を、ぼくを乗せたこの世界の方が上へ上へと昇っているのだ。 「大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。 たとえば、星を見るとかして。」 ある日、ぼくの前に佐々井が現れてから、ぼくの世界を見る視線が変わって行った——。 科学と文学が溶け合い、人と世界の関係を鮮やかに詩的に描く、永遠の名作。 中央公論新人賞、芥川賞受賞作。
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