
利休の死 戦国時代小説集 (中公文庫)
井上靖
中央公論新社 / 2021
この本について
仕事でも人間関係でも、「あ、この人とはどうやっても交わらないな」と気づく瞬間ってありますよね。表向きはうまくやれているつもりでも、相手の“眼”が自分の内側を何ひとつ見ていないと分かった時の、あの冷たい感じ。そこでどう距離を取るべきか、あるいはどう立ち振る舞えば自分を保てるのか、正解がなくて悩む人は多いと思います。 井上靖『利休の死』に収められた利休と秀吉の関係は、その葛藤を極端な形で描いてくれます。互いに初めて顔を合わせた一瞬で運命が決まっていたこと。言葉ひとつが短刀のように突き刺さること。そして、相手が自分を“何者とも見ていない眼”を向けてくる時の、あのどうしようもない断絶。「永久に交叉することのない眼」という描写を読むと、利休の苦さが妙に現実的に響いてきます。これは歴史小説というより、相容れない相手とどう向き合うかの物語として読むと腑に落ちます。 特に、朝顔の一件のように、利休が表向きは礼を尽くしながらも、内側ではどうしても譲れない何かを守ろうとする姿は、自分の美意識や矜持をどこまで保つか迷う時の参考になります。相手をねじ伏せたいわけではないけれど、ただ迎合もできない。そんな時に利休の揺れ方は妙にリアルなんですよね。 相手との距離感にいつも悩んでしまう人に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの90%が集中しています。
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