「暮し」のファシズム ――戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた (筑摩選書)

「暮し」のファシズム ――戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた (筑摩選書)

大塚英志

累計読者数3
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star総合評価 51/100
start序盤集中型

この本について

最近、「日常」や「生活」という言葉に妙なざらつきを覚えることがありませんか。誰かに操られているわけじゃないのに、気がつくと“望まれている行動”のほうへ体が流れていく感じ。コロナ禍の頃の「新しい生活様式」という言葉にモヤっとした人なら、あの正体を少し思い出すかもしれません。 『「暮し」のファシズム』は、そのざらつきの源を、戦時下の「日常」から丁寧にたどっていく本です。怖い話をしたいわけではなく、むしろ日常のレベルに潜り込んでくる政治のかたちを落ち着いて見えるようにしてくれる。例えば、生活雑誌がどうやって国策と結びつき、服の選び方や料理といった細部にまで“内面の参与”を促していったのか。その仕組みを知ると、いま自分のまわりで起きている空気の変化にも敏感になれます。 もうひとつ効いたのは、戦時色が薄いものほど逆に統制的である、という指摘でした。太宰の文章や「サザエさん」の楽しげな世界でさえ、実は時代の空気をまとっている。その気づきは、いま“危険な香りのしない言葉”にどう距離を取るかを考えるヒントになります。 自分の生活に政治を持ち込みたい人向けではなく、むしろ「知らぬ間に入り込まれるのが苦手な人」に刺さる本だと思います。読んだあと、周囲の言葉を疑うというより、少しだけ立ち止まるクセがつく。それくらいの変化が、ちょうどいい距離感なんだと思います。

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