
コロナ禍と出会い直す 不要不急の人類学ノート
磯野真穂
この本について
コロナの頃、なんとなく感じていた「自分の判断じゃなく、空気に身体ごと動かされている気がする」という感覚って、言葉にしづらいまま残っていませんか。あの時のモヤモヤは、自分が臆病だったからでも、周りが過敏だったからでもなく、もっと深い「感じ方そのものへの介入」によるものだったのかもしれない──この本を読むと、そんな気づきが静かに立ち上がります。 著者は、罰則もないのに極端な対策が長く続いた日本で何が起きていたのかを、「身体の深層」「境界の感覚」「情報経験と直接経験のズレ」といった切り口で丁寧に追っています。読みながら、自分の行動の理由だと思っていたものが、実は社会の“型”に沿って反応していた面もあったのでは、と立ち止まらされる瞬間が何度もありました。気の緩みという曖昧な言葉が、人々をどう縛り、どんなふうに私たちの身体感覚を形作ったのか。その説明が具体的で、妙に腹落ちします。 とはいえ、この本は「日本はダメだ」と断ずるものではありません。むしろ、なぜあんなふうに動いてしまったのかを冷静に見直し、過去と出会い直すための道具を渡してくれる感じです。自分の正しさに過剰な自信も持てないし、誰かの正しさに丸投げするのも違う。あの揺らいだ時間に起きていたことを、そろそろ言葉で整理したい人に刺さると思います。
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