
葬送習俗事典 死穢の民俗学手帳 (河出文庫)
柳田国男
河出書房新社 / 2021-06-05
この本について
死にまつわる習慣って、身近にあるはずなのに、いざ向き合おうとすると「どうしてこうなっているんだろう」と説明しきれないまま終わってしまうことがあります。忌を避ける風習が形だけ残っていたり、地域ごとにまったく違う作法があったりして、理由がわからないまま受け継がれている感じにモヤモヤする人も多いと思います。 柳田国男の『葬送習俗事典』は、その“説明しにくさ”に静かに光を当ててくれる本でした。たとえば諏訪の河渡りの白布や、位牌を二つ作る野辺位牌、三途川の姥から借りてきたものを返すという言い伝えなど、断片的に聞いたことはあっても、背景まで理解したことのない習俗が、生活の延長として立体的に見えてきます。また、忌の制度がなぜ薄れていったのか、誰がどこで困って、どう折り合いをつけてきたのかが、具体的な姿として浮かび上がるのが面白いところです。 読んでいて思ったのは、これが“昔の不思議な風習”の話ではなく、人が死を前にしたときに生まれる不安や、共同体の中での役割の決め方、その折衝の仕方がそのまま表れた記録だということです。儀礼の細部に触れながら、自分が属する社会のメカニズムまで見直すきっかけになるので、歴史に詳しくなくても読みやすいと思います。 日常の中で「理由はわからないけれど、なんとなく続いているもの」に目が向く人には、特に刺さる一冊です。
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