
〈あの絵〉のまえで (幻冬舎文庫)
原田マハ
幻冬舎 / 2022-12-08
この本について
朝の満員電車に押し込まれるたびに、どこかで気持ちを切り離してやり過ごしているような感覚ってありますよね。年末の街のきらびやかさを見ても、自分だけ外側にいるような気がして、むしろ心がざわつくこともあると思います。誰に言えるわけでもないけれど、日々の生活の中でじわっと溜まっていくあのモヤモヤ。その感覚に近い言葉が、この本には静かに置かれています。 『〈あの絵〉のまえで』は、急に人生が劇的に変わるような話ではありません。むしろ、日常のしんどさをそのまま抱えている人物が、ふとした瞬間に絵と向き合うことで、自分の中の小さな声に気づいていく物語です。電車の中でただ運ばれていくだけのように感じるとき、街の輝きに取り残されているように思うとき、その「感じてしまう自分」を否定せずにそっと受け止めてくれるような読み味があります。絵の前で立ち止まるという行為が、現実から逃げるのではなく、自分の輪郭を取り戻す時間になるんだと気づかされるんです。 特に、毎日の生活に流されながらも「本当はこんな気持ちでいたくない」と思っている人には静かに刺さる本だと思います。大きな答えをくれるわけではないけれど、自分の中の澱んだ気持ちに、少しだけ呼吸を通してくれる。そんな一冊です。
読書インサイト
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多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの40%が集中しています。
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