
恋文の技術 (ポプラ文庫 日本文学)
森見登美彦
ポプラ社 / 2011-04-01
この本について
なんとなく毎日をやり過ごしていると、ふとした瞬間に「このまま流されていくのかな」と不安になることがあります。頑張りたい気持ちはあるのに、未来を思うほど灰色に見えたり、かといって今いる場所に満足しているわけでもない。抜け出したいけど、抜け出すほどの力もない。そんな宙ぶらりんな時間って、案外長く続きます。 森見登美彦『恋文の技術』を読んでいて、刺さっている人が多い抜粋を見ると、この本は“もがきながら前に進もうとする自分を、ちょっと笑いながら肯定してくれる”ところが効いているんだと思います。たとえば「夏休みの醍醐味は、その終焉にあり」という妙な達観や、「こんな俺は俺ではない」と自分の不甲斐なさに苛立つ葛藤、「だんだん自分の過去も未来も灰色になる」といった停滞感。どれも深刻さはあるのに、どこか可笑しみがあって、自分だけじゃないと肩の力が抜けます。 物語自体は手紙の連鎖で進んでいくのですが、そこで描かれるのは立派な成長ではなく、もっと地味で等身大の迷いです。将来への不安からクラゲ研究に逃げ込んだり、和倉温泉で清潔感を磨こうとして空回りしたり、秋のメランコリックを「たしなみ」と言い聞かせたり。そういう一つひとつの足踏みが、読む側の自分の足踏みと自然に重なっていきます。 うまくいっていない自分を笑い飛ばせる余裕がほしい人に、とてもよく刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
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