
八月の御所グラウンド (文春e-book)
万城目 学
文藝春秋 / 2023-08-03
この本について
日々、目の前のことをこなすだけで精一杯なのに、ふと立ち止まると、自分はどこに向かっているんだろう…と妙に不安になることがあります。人間関係も、勉強や仕事のペースも、気づけばじわじわと崩れていたり、逆に思わぬ縁に救われたり。その「じわじわ」に名前がつけられないまま、大人になってしまった感じがあるんですよね。 『八月の御所グラウンド』は、そんな曖昧さをそのまま物語にしていて、読んでいると「人生ってこういう濃淡でできてるよな」と不思議に落ち着いてきます。登場人物たちの揺らぎは派手ではないのに、自分のどこかに重なる瞬間が多いです。置いてきぼりの卒論、少しずつ遠ざかる関係、うまく言えない違和感に気づいたときの身体のざわつき…。そういう場面が丁寧に描かれていて、「自分だけじゃないんだ」と思わせてくれるところがありがたいです。 同時に、この小説は京都という土地の空気や、戦争を生きた人の影がそっと混ざり込んでいて、今いる自分の時間の厚みみたいなものを意識させられます。大きな教訓を押しつけてくるわけではなく、ただ、目の前の景色や人の表情の変化が、じわっと心に沈んでいく。その余韻のおかげで、次の日ちょっとだけ人に優しくなれたり、何かをもっとていねいに扱いたくなったりします。 登場人物の不器用さに、自分の生活のどこかが反応する人に刺さる作品だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの16%が集中しています。
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