
〈公正(フェアネス)〉を乗りこなす
朱喜哲
この本について
議論していて「あれ、この人とはそもそも土台が違うんじゃないか」と感じて、そこで会話が止まってしまうことがよくあります。自分の中の“正しさ”に自信はあるけれど、それをどう扱えばいいのかは分からない。正義を語ろうとするほど、むしろ人と距離が生まれてしまうあの感じです。 この本が面白いのは、「正義」を絶対的な善としてではなく、異なる価値観どうしを調停するための手続きとして捉え直してくれるところです。自分の確信が相対的な妥当性しか持たないことをいったん認めつつ、だからこそ会話を続けるための姿勢をどう保つか。さらに、他者の利害関心を必要以上に自分ゴト化せず、逆に想像力が暴走して敵味方に分けてしまう癖を手放す視点もくれます。私自身、これを読んで「会話を打ち切っていたのは自分の側かもしれない」と気づくことが多かったです。 また救われたのは、「善では一致できなくても、避けるべき悪にはある程度の一致がある」というシュクラーの考え。正義を語るとき、つい高い理想像を思い浮かべてしまうけれど、まずは残酷さを最小化するという足場を共有できれば、いまの社会で何を優先すべきかが少し見えやすくなります。 正義やフェアネスの話題になるとしんどくなる人、議論の途中で「もう分かり合えない」と感じがちな人にほど静かに効く本だと思います。
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