
家から5分の旅館に泊まる (スタンドブックス)
スズキナオ
この本について
最近、遠出する気力が湧かないとか、休みがあっても「何をすればいいのかわからないまま終わる」みたいな感覚を抱えることが増えてきました。昔は気分転換といえば酒か、思い切っての小旅行だったのに、それすら体力や気持ちがついてこない。近所をただ歩くだけで終わる日があると、自分でも驚くほど落ち込むことがあります。 『家から5分の旅館に泊まる』を読んでいて感じたのは、そういう“疲れ切った状態”のままでも受け止めてくれる本だということでした。派手な癒しを求めないまま、ただ知らない道を歩くときの安堵。遠くに行かなくても「よく知っている町の、知らない夜」に身を置くことで、ほんの少し世界の密度が変わる瞬間。旅という言葉のイメージを大きくしすぎなくていいんだな、と肩の力が抜けました。 そしてこの本は、旅を「人生を変えるイベント」として扱わないところが救いでした。行けば行けなかった場所が生まれて、触れられるものはほんの砂粒ほど。それでも、そのわずかな時間が記憶として残り、自分という一回性をそっと確かめられる。大げさじゃないのに、妙に沁みるんですよね。疲れている時期ほど、こういう視点がありがたいです。 人混みも遠出もいらない。ただ、数分先の旅館やビジネスホテルに泊まるだけで、日常の輪郭が少しだけ変わる。この感じが必要なのは「とにかく今は何も頑張れないけれど、どこかで息だけはしたい人」だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
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