
手段からの解放―シリーズ哲学講話―(新潮新書)
國分功一郎
新潮社 / 2025-01-17
この本について
仕事でも生活でも、「これって何の役に立つんだろう」とつい手段の方ばかり気にしてしまう時ってありますよね。楽しむことすら目的化してしまって、心が落ち着かないというか、いつの間にか自分の感覚がどこか遠くに行ってしまったような感覚が残ることもあります。僕自身、まさにそこでもがいていた時に、この本にかなり救われました。 國分さんはカントを手がかりに、快適なもの、美しいもの、崇高なもの、善いものという四つの「快」の違いを丁寧に説明してくれます。ただの哲学講義ではなく、「なぜ消費するだけでは満たされないのか」や「なぜ人に親切にすると気持ちがいい、ではズレるのか」といった、日常の違和感にちゃんと理由を与えてくれるところがありがたいところです。特に、構想力がどう働いているのかを知ると、惰性の楽しみと、自分の感性をちゃんと使って味わう楽しみの距離が見えてきます。 読んでみて思ったのは、享受そのものを否定しているわけではなく、むしろ「自分の感性を取り戻すためにこそ必要なんだ」と言っている点でした。忙しさの中で手段に追われていると、自分の好みすら分からなくなる moment があるけれど、この本はその迷子状態から一歩引き戻してくれる感じがあります。 役に立つかどうかばかり考えて疲れている人、自分の「好き」がわからなくなりつつある人には、とても静かに効いてくる本だと思います。
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