
小学五年生 (文春文庫)
重松 清
文藝春秋 / 2009-12-10
この本について
忙しい毎日の中で、ふと「自分の感情って、こんなに揺れるものだっけ」と思うことがありませんか。強がってみたり、平気なふりをしたり、うまく言葉にできない不安だけが残ったり。大人になっても、あの頃と同じように気持ちの置き場がわからなくなる瞬間があると思うんです。 『小学五年生』を読んでいて感じたのは、そういう揺れを無理に整理しなくていいんだ、ということでした。たとえば、病院に通う母を気にしながら、バスの回数券をどうするかで心がいっぱいになる場面。あるいは、好きな子に傘を貸すかどうかで悩み、うまくいかずに一人で帰る帰り道。大人から見れば些細なできごとかもしれないけれど、当事者の心の重さは決して軽くないんですよね。その「重さの本当の理由」を、言葉にならないまま描いてくれるのがこの一冊です。 もうひとつ印象的だったのは、大人側の不器用さがにじみ出ているところ。ぶっきらぼうなバス運転手や、寂しさを隠すために急におしゃべりになる父親。少年の視点を通して見ると、彼らの不器用さもどこか自分の姿と重なって、少しだけ胸の奥がやわらかくなる感じがしました。 うまく言えない気持ちを抱えたまま日々を過ごしている人に、そっと寄り添ってくれる物語です。こういう「言葉になる前の感情」を大事にしたい人には、きっと静かに響くと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの23%が集中しています。
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