
その日のまえに (文春文庫)
重松 清
文藝春秋 / 2008-09-10
この本について
最近、理由のはっきりしない不安にずっとまとわりつかれているような感覚を抱える人、多い気がします。忙しいわけでもないのに落ち着かなくて、何をしていてもそわそわする。悲しいわけでもないのに胸がざわつく。僕自身、そういう時期が長く続いたことがあって、「この状態に名前がつけば、もう少し楽なのに」と何度も思いました。 重松清『その日のまえに』は、まさにその”名前のつかない不安”に手を伸ばすような本です。作中では「不安には輪郭がなくて、悲しみのほうがまだ扱いやすい」と語られます。この感覚、刺さる人には刺さりすぎると思います。悲しみは深いけれど触れ方を覚えられる。不安は霧のようにまとわりつき、避けることもつかまえることもできない。その違いを言葉にしてくれるだけで、呼吸が少しだけ整うように感じました。 もうひとつ、この本が優しいのは「日常の強さ」を描いてくれるところです。大切な人の病気や別れの中でも、生活はいつも通り続いてしまう。その事実は残酷にも思えるけれど、同時に人を支える柱にもなる。派手なカタルシスではなく、毎日を淡々と積み重ねることそのものに救いを見つけていく物語は、焦って走り続ける日々にひと息入れてくれます。 あとになってからしか気づけない感情を抱えたことがある人、あるいは「終わらせるのも始めるのも怖くて動けない」と感じている人に、静かに寄り添ってくれる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第8章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
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