
ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)
田辺 聖子
KADOKAWA / 2020-12-03
この本について
人と一緒に暮らしたり、誰かと深く関わったりすると、自分でもよく分からない不機嫌や、言葉にできない願望がふっと顔を出すことがあります。相手の気持ちを理解したいのにズレてしまったり、自分の弱さを見せるのが怖かったりして、どう扱えばいいのか分からないまま溜めこんでしまうことも多いですよね。 『ジョゼと虎と魚たち』は、そんな「情緒の揺れ」みたいなものを、ドラマではなく生活の質感として描いてくれます。例えば、誰もが座りたがる椅子みたいに不機嫌の置き場はひとつしかない、という比喩は、恋人や家族との些細な摩擦がどうして起きるのかを妙に腑に落ちる形で示してくれます。また、ジョゼの言葉が嘘ではなく“願望の形”として存在している、という描写は、人が何かを誤魔化すとき、その裏にどんな痛みや希望があるのかを静かに見せてくれます。さらに、仕事に向かう人の恐怖や、自分はまだプロじゃないという感覚も、生々しいのにどこか救われる温度で描かれていて、過去の自分の焦りと重なる人は多いはずです。 誰かとの距離感にいつも迷う人、自分の正直さと現実の折り合いに疲れている人にはとても沁みると思います。完璧な答えをくれる本ではないですが、心の中で絡まっていた糸が少しだけほぐれるような、そんな読み心地があります。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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