
ヒトのオスは飼わないの? (文春文庫)
米原万里
文藝春秋 / 2005-06-10
この本について
最近、自分の感情や人との距離感に、どう折り合いをつければいいのか分からなくなることがあります。可愛がりたい気持ちと、踏み込みすぎる不安。大事にしたいのに、正しい関わり方が分からない。頭では分かっていても、心が追いつかない。そんな揺れを抱えたまま日々を回している人は多いと思います。 米原万里さんの『ヒトのオスは飼わないの?』は、猫との暮らしを通して、そういう「どうにも言語化しにくい揺れ」をそっと拾い上げてくれる本でした。動物は動くから動物なのだ、というシンプルな一文に、相手をあるがままに動かせる余白を残すことの大切さを思い出させられます。古顔猫を三倍可愛がるという話も、人間関係に置き換えると怖いほどリアルで、環境が変わるときにこそ、弱っている側に手を伸ばす視点を教えてくれます。さらに、永遠にしたくなる一瞬を追いかけてカメラを買い込み続ける描写は、誰かを好きになるときの不安と高揚がそのまま重なって、読んでいて妙に胸がざわつきます。 猫の本というより、人と距離をとりながら生きているつもりでも、いつのまにか誰かに影響されてしまう自分に気づく本です。感情の扱い方にいつも少し自信がない人に刺さると思います。
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