
教団X (集英社文芸単行本)
中村文則
集英社 / 2014-12-20
この本について
ときどき、自分が信じてきた価値観そのものが揺らぐ瞬間ってあります。誰かの「正しさ」が大声で押し寄せてきたり、世界のニュースを見ては、人間って何をしているんだろう、と妙な空虚さだけが残ったり。そんな時に限って、答えは見つからないまま、ただモヤモヤだけが積もっていくんですよね。 『教団X』は、そのモヤモヤを“解消する”というより、もう少し広い視野に引っ張り出してくれる本でした。祈りの意味や善意の暴力、物語としての「人間」という視点など、どれも簡単に割り切れないテーマばかりなのに、不思議と読みながら自分の思考の窮屈さがほぐれていく感覚がありました。とくに、幸福は排除の上に成り立つとか、人が自分の優位性を信じたくなる生き物だとか、普段あえて考えないようにしていた現実を静かに突きつけてきます。 この本が効いてくるのは、世界の複雑さに触れたとき、すぐに一つの正解に逃げ込まないための“持久力”みたいなものです。自分の物語が他人の物語と衝突せずに並んで存在するにはどうしたらいいのか、その距離感を考えるきっかけにもなります。こういう問いかけを真正面から受け止めたい人に刺さると思います。 何かを断定するのではなく、「人間とは結局どういう存在なのか」を一緒に考えさせられる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの23%が集中しています。
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