TVピープル (文春文庫)

TVピープル (文春文庫)

村上春樹

累計読者数10
平均ハイライト数 7.1件/人
star総合評価 42/100
boltライト読書型

この本について

最近、人と話していても自分だけ少し宙に浮いているような感覚があったり、昔読んだ本の内容がすっぽり抜け落ちていて「じゃああの時間は何だったんだろう」と妙に不安になることがありませんか。日常は普通に回っているのに、自分の存在感だけが薄くなったような、あの静かなざわつきです。 村上春樹『TVピープル』を読み返すと、そのざわつきが“自分だけのものではない”ことに少し救われます。人の心は自分でも底が見えない井戸みたいで、ときどき浮かび上がる断片が本当の姿とは限らないこと。深い悲しみの中にも、どこか滑稽な気配が入り込んでくること。そういう「うまく言葉にできない揺れ」を無理に整理せず、そのまま物語として受けとめていいんだと思わせてくれます。 そしてもうひとつ大きかったのは、他人から存在をスッと無視されるような場面の描き方です。こちらは確かにここにいるのに、相手は平然と自分を素通りする。あの奇妙な無力感を、「一度でも経験したことがある人ならわかるはずの感触」として扱ってくれることで、自分の感覚が変に間違っていたわけじゃないと腑に落ちました。思い返すと、こういう自己確認の場面って、大人になるほど必要になるのかもしれません。 仕事や生活の中で「自分はちゃんとここにいるのか」とときどき立ち止まってしまう人に、とても静かに効いてくる一冊です。

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