
時間の言語学 ──メタファーから読みとく (ちくま新書)
瀬戸賢一
この本について
時間のことを考えるとき、いつもどこか落ち着かなくなることがあります。仕事の締切に追われているのに「時間がない」としか言えなかったり、過去や未来をどう捉えているのか、自分でもよくわからなかったり。そういう曖昧なモヤモヤに言語の側からじっくり光を当ててくれるのが『時間の言語学』でした。 読んでいて特に刺さったのは、私たちが「時間そのもの」をどう感じているかが、実は言葉の結びつきに出てしまうというところです。たとえば「時間を潰す」は言えても「ときを潰す」とは言わない理由とか、過去を“後ろ”に置く表現と“前”に置く表現が共存しているのはなぜかとか、普段スルーしている感覚が丁寧に解きほぐされていきます。英語のgoとcomeの使い分けまで絡めて説明されると、時間の流れをどう認識しているのか、自分の中の前提が変わる感じがありました。 もうひとつ面白かったのは、コロケーションの話が時間の捉え方と地続きだという点です。「旅行に立つ」がぎこちなく、「旅に立つ」が自然に感じられる理由を追いかけていくと、語と語が連なる“癖”のようなものが、時間のイメージにも同じように染みこんでいることが見えてきます。言葉の問題のようでいて、実は自分の思考や感覚のクセを知る手がかりになる本でした。 時間の扱いにいつも違和感を抱えている人、過去と未来の距離感にうまく名前をつけられない人には、静かに効く一冊だと思います。
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