
岳飛伝 十七 星斗の章 (集英社文庫)
北方謙三
集英社 / 2018-03-25
この本について
仕事でも人生でも、「自分が何に縛られて動けなくなっているのか分からない」という時期ってありますよね。正しさとか責任とか、背負っているものが大きいほど、いま立っている場所の意味までぼやけてくる感じがあります。最近、このモヤモヤに付き合ってくれる本として『岳飛伝 十七』を読み返しました。 この巻の抜粋には、国や立場という“外側の理由”から解き放たれていく人物と、逆にそこから逃れられずに足を取られる人物が、淡々と、でも痛いほど描かれています。たとえば「国は雪が解けるように意味を失う」という胡土児の言葉は、自分の拠りどころが壊れた瞬間の空白を思い出させるし、岳飛と秦檜の会話には、正しさを求め続けた人間が最後に見つける“重さ”がそのまま置かれています。どちらも派手な教訓はなくて、ただ、自分も同じように揺れているだけなんだと落ち着かせてくれるんです。 そして、この物語は強さよりも、「弱さを抱えたまま前に進む姿」を何度も見せてきます。いま死ねるか? と問われて言葉に詰まる兵士や、別れの場面で言葉が出ない隊長の姿は、覚悟という言葉の外側にある“現実の揺れ”を丁寧に拾っています。読む側としては、自分の迷いを否定されないまま少し視点だけが変わる、そんな読後感が残ります。 組織の中で役割を演じ続けて疲れた人、正しさを考えすぎて身動きがとれなくなっている人に、とくに沁みる巻だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
読書の順序
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