
成熟脳―脳の本番は56歳から始まる―(新潮文庫)
黒川伊保子
新潮社 / 2017-12
この本について
年齢を重ねるほど、人との距離感や、自分の役割みたいなものがわからなくなる瞬間が増えます。相手にどう接したらいいのか、そもそも自分は誰かの役に立てているのか…そんなモヤモヤが積もると、気づけば身の回りの出来事に反応する余力すら落ちていく感じがあるんですよね。 『成熟脳』は、そういう「なんとなく自信が揺れる時期」に、脳の仕組みからそっと輪郭をつけてくれる本でした。たとえば、人は相手とやりとりがあることで安心する生き物だという話。こちらが働きかけて相手が反応する、その小さな往復だけでも脳が外界を確かめているという視点は、人間関係を「能力」や「優劣」で見がちな自分を少しゆるめてくれます。また、弱点を見せられる相手だからこそ続く関係がある、という記述も現実的で救われました。完璧さより、頼りなさのほうが相手の記憶に残るというのは、妙に腹落ちします。 さらに、五十六歳以降が脳の出力が最大化する時期だという話も、焦りより「これから整っていく感覚」をもらえます。無駄なものを手放しながら、自分の中で大事なものだけが残っていく。その過程を肯定してくれるのが、この本のあたたかさだと思います。 人との距離や自分の居場所に迷っている人に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第8章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの47%が集中しています。
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