
トマス・アクィナス 理性と神秘 (岩波新書)
山本 芳久
岩波書店 / 2017-12
この本について
最近、「理性では分かってるのに、欲や感情のほうが勝ってしまう」とか、「判断の軸がぶれてしまう」といったモヤモヤを抱えている人と話すことが多いです。自分も同じで、意思の力だけで何とかしようとすると、どこか緊張しっぱなしになる瞬間があります。 この本の刺さるところは、その状態を無理に肯定も否定もせず、もう少し丁寧にほぐしてくれる点なんですよね。たとえば、抑制と節制の違いが語られる箇所。意志で押しとどめるのは「最善の弥縫策」にすぎず、本来は理性と欲望が無理なくかみ合った状態に向かっていくものだ、という視点は、自分の振る舞いを責めるよりも「どう育てていくか」に意識を向けさせてくれます。また、「賢慮」の説明も実用的で、理想論ではなく“今ここの状況”を見て動く力として描かれるので、判断に迷いがちな場面で効いてきます。 さらに、この本が面白いのは、理性を絶対視するのではなく、理性が神秘へ開かれていくプロセスまで含めて描いているところです。理解できる範囲に閉じこもるのではなく、理解の枠そのものが少しずつ広がっていく感覚があって、読んでいると自分の思考の窮屈さがゆるむ瞬間があります。 自分の欲望や判断を「力技で抑え込むだけの生き方」に違和感がある人には、とても静かに効いてくる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの21%が集中しています。
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