
わたし、定時で帰ります。(新潮文庫)
朱野帰子
この本について
仕事を好きでいたい気持ちと、ちゃんと休みたい気持ちって、両立するはずなのに、現場にいるとどうしても揺れますよね。周りの温度に合わせてしまったり、「自分だけ抜けるわけにいかない」と思ってしまったり。気づけば、何に疲れているのかもよくわからないまま続けてしまうことがあると思います。 『わたし、定時で帰ります。』は、そんなモヤモヤを無理やり励ますんじゃなくて、「人が働く時に本当に大事なものって、結局ここだよね」と、登場人物たちの関係や仕事の場面を通して静かに見せてくれる小説です。たとえば「会社は自分のためにある」という言葉が、その瞬間だけの勇ましい叫びではなく、色んな衝突や妥協を経た上での実感として描かれているところが、この作品の強さだと思います。また、人によって働く価値観が違うことが、生産性や優しさというテーマと地続きで描かれるので、「自分が間違ってたわけじゃなかった」と自然に呼吸が軽くなる場面が多いです。 そして意外と効くのが、恋愛の描写です。仕事に追われて大事なものを後回しにしてしまう瞬間や、逆に誰かと過ごす時間が自分の働き方を変えていく瞬間が丁寧に書かれていて、読んでいると「生活と仕事の線引きって、もっと素直でいいんだ」と思えるんですよね。 自分の働き方に少しでも引っかかりがある人、特に「頑張りすぎてしまう自覚はあるけど、抜き方がわからない」というタイプにはかなり刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
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