
感染症と文明 共生への道 (岩波新書)
山本 太郎
岩波書店 / 2011-06-21
この本について
感染症の話題って、つい「どう防ぐか」ばかりに意識が向きがちで、気づけばニュースに振り回されて疲れてしまうことがあります。完全にコントロールしたい気持ちはあるのに、どこかで「これって本当に可能なんだろうか」と引っかかる。そんなモヤモヤを抱えている人に、この本はとても静かに効いてきます。 読んで一番揺さぶられるのは、感染症との向き合い方が「勝つか負けるか」ではなく、「不完全なまま折り合いをつけ続けること」なのだという視点です。病原体を根絶した瞬間がゴールではなく、むしろ次の大きな悲劇の下地になる可能性さえあるという指摘は、思い切り思考の向きを変えてくれます。ペニシリン大量生産がマンハッタン計画級の国家プロジェクトだったという歴史も、医学の進歩が常に功罪セットで積み上がってきたことを実感させます。 さらに本書が面白いのは、ペストや麻疹の流行だけでなく、カースト制度の形成や農耕の始まりまで視野に入れて、「人類はどんな環境でどんな妥協をしてきたのか」を丁寧にたどるところです。共生とは心地よさとは真逆の、継続的な小さな不快さの積み重ねだという言葉に、自分の生活や仕事の判断にも通じるものがあるなと感じました。 完全な正解を求めるほどしんどくなるタイプの人に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの29%が集中しています。
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