
民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代 (中公新書)
藤野裕子
中央公論新社 / 2020-08
この本について
社会の空気がざわつくたびに、「何が暴力で、何が正当な行動なのか」がよくわからなくなることがあります。強い言葉を見ただけで身構えてしまったり、抗議活動と危険行為がごちゃ混ぜに語られるのを見て、なんとなく距離を置いてしまったり。自分の感覚が揺れる理由が知りたいけれど、感情論だけではどうにも整理がつかない。そんなときに読んでよかったのが、この『民衆暴力』でした。 この本が効いたのは、まず「暴力はいけない」という真っ当な感覚がどんなふうに政治的に利用され、行動の幅を狭めてしまうのかを、歴史の具体的な場面から示してくれるところです。さらに、江戸の百姓が武器を持っていたのに意図的に使わなかった理由や、領主と百姓が共有していた“仁政”の認識など、今の価値観では想像しづらい社会の成り立ちを通して、「暴力の正当性って時代によって全然違うんだ」という視点をもらえました。そして、日比谷焼き打ちや関東大震災時の虐殺のような重い出来事に向き合うことで、「民衆が暴力に向かう瞬間」には生活の苦しさや抑圧だけでなく、解放願望やエネルギーが絡んでいたことが立体的に見えてきます。 歴史の話をしているようで、実は今の社会の息苦しさの正体に触れている本です。抗議や政治参加の線引きにモヤモヤしている人、判断軸を自分の中に持ちたい人にはとても刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
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