
諦めの価値 (朝日新書)
森 博嗣
株式会社朝日新聞出版 / 2021-08-12
この本について
やりたいことが頭にあるのに、始める前から「どうせ無理かな」と引っかかってしまう日ってありますよね。気持ちだけで踏ん張れと言われても、状況も能力も変わらないのは自分が一番わかっていて、そこで足が止まってしまう。あの宙ぶらりんな時間がいちばんしんどいなと、僕自身よく思います。 『諦めの価値』は、その停滞を否定せずに、少し別の角度から灯りをつけてくれた本でした。森さんが言う「諦める」は、逃げることでも投げ出すことでもなく、思い込みを外して現実を観察する行為に近いんですよね。才能や環境という動かない前提をいったん受け入れることで、何に力を配るべきかが整理されていく。そして、失敗を先回りして想像しておくという視点もおもしろくて、覚悟の準備ができると意外なほど動きやすくなる。さらに、単なる憧れの段階では「諦める」以前にも立っていない、という指摘は耳が痛いけれど、行動と妄想の境界をはっきりさせてくれます。 結局、この本は「頑張れ」とも「辞めろ」とも言いません。ただ、自分の条件を正確に知り、考えて、試して、そのうえで選ぶことだけは放棄しない方がいい、と静かに背中を押してくれる。周りに認められる成功ではなく、自分の満足をどう作るかに軸があるのも救われました。 自分の“見切りどき”や“続けどき”がわからなくなっている人に、特に刺さると思います。
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