
老人ホームで死ぬほどモテたい 新鋭短歌シリーズ
上坂あゆ美 and 東 直子
この本について
ふだん生活していると、自分でもよくわからない感情にぶつかることがありませんか。家族のことを思うと少し胸がざわついたり、誰かの何気ないひと言に重力が変わったみたいに感じたり、理由のない孤独が急に押し寄せてきたり。大ごとじゃないけれど無視もできなくて、「この気持ちってどこへ置けばいいんだろう」と立ち止まるあの感じです。 『老人ホームで死ぬほどモテたい』に出てくる短歌は、まさにその置き場のない気持ちを一度受け止めてから、ちょっと別の角度に置き直してくれるようなところがあります。たとえば「魂が入りきらずに戸惑っている」ような自分の変化のぎこちなさを笑ってしまえるし、「魚にはまぶたがない」みたいな世界の観察は、自分の視界のクセに気づかせてくれる。家族との距離の痛さや、おかしさと悲しさが同居する瞬間も、そのまま言葉にされると、なぜか少し呼吸がしやすくなるんですよね。 読んでいると、自分の中にいるいろんな自分が、ちゃんと存在していいんだと思えてきます。怒っている自分も、拗ねている自分も、ちょっと無敵な気分の日の自分も、そのまま言葉にすると輪郭が見えてくる。作者が「殴ったり殴られたりしながら輪郭を探す」と言っているのも、少しわかる気がしました。 自分の感情の行き場にときどき困ってしまう人、ある瞬間だけ急に世界の色が変わるように感じる人には、静かに刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
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