
夜行
森見登美彦
JTBパブリッシング / 2015-05-18
この本について
仕事の帰り道や、家に着く直前のあの静かな時間に、ふと「自分はいま何を見落として生きているんだろう」と不安になることがあります。目の前の景色は見えているはずなのに、実際には言葉や思い込みで世界を薄く塗りつぶしてしまっている感じ。そんなときに森見登美彦の『夜行』を読むと、日常のすき間にひっそり潜んでいた“もう一段奥の世界”を、そっと指で示されるような感覚があります。 たとえば、車窓を眺めているつもりが、実は自分の中の言葉だけを見ていたという指摘。あるいは、夜の暗さを本当に理解するには肉眼で確かめるしかないという言葉。こういう場面に触れると、いつの間にか世界との距離が少しだけ変わるんですよね。観光地として知っているはずの出町柳や鞍馬、千光寺公園といった地名も、この物語の中では「そこに行ったはずなのに何かが抜け落ちている場所」として立ち上がってきて、自分の記憶の方まで揺れる感じがします。夜がどこへでも通じているという一言も、逃避ではなく、見ようとしていなかった方向があるだけなんだと受け取れる。 大げさに人生が変わるような本ではないけれど、見慣れた景色の奥にある空白にそっと光を当ててくれる物語です。いつもの道がふと違って見える瞬間を求めている人には、静かに刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの56%が集中しています。
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