
「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 NHK出版新書
磯田 道史
この本について
歴史を読んでいると、結局「いまの日本ってどこから来たんだっけ」という根っこの部分が曖昧なままになることがあります。組織でも国でも、目の前の情報は多いのに、大きな流れをどう捉えればいいか分からない。そんなモヤモヤを抱えて読むと、この本はけっこう効きました。 刺さっていた抜粋を見る限り、読者の関心は「権力がどう動き、人はどう振る舞ったか」というリアルな構造に向いているように思います。例えば、公儀国家分有論や分相応、上意下達の話が何度も出てきますが、これらは江戸から近代にかけての日本人の行動原理を説明するキーワードとして扱われます。個人的に響いたのは、客観性と情緒の関係や、異能の人物をどう扱うかという視点で、会社での意思決定やチームづくりの場面にそのまま置き換えられるところでした。 また、司馬遼太郎の作品を「史実との距離」で整理したり、頼山陽や蘇峰のように“物語を通して国のかたちを定義した人”を紹介する流れがあり、歴史の読み方そのものをひとつ広げてくれます。歴史小説を読んできたけれど、実際どこまでが創作で、どこからが史料に裏付けられたものなのか、腑に落ちないままの人には特に向いていると思います。 構造で物事を捉えたいけれど、感覚や情緒も大切にしたい。そんな人にちょうどいい距離感の本でした。
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