
かか (河出文庫)
宇佐見りん
河出書房新社 / 2022-04-26
この本について
人の気持ちって、他人から見ればたったひと言で済まされそうなのに、自分の中では同じ場所をぐるぐる回り続けて抜けられないことがあります。忘れたいのに思い出してしまうとか、誰も知らないところでだけ自分の弱さがあふれてしまうとか。あの感じに名前をつけられないまま、大人になっても抱え続ける人は多いと思います。 『かか』を読んでいて、抜粋に反応した人たちが共有しているのは、「痛みの見え方を言語化してほしい」という願いに近いものなんだろうなと感じました。たとえば、傷をなぞり続けてしまう心のクセを、溝という形で描いてくれるところ。もう取り返せない瞬間を、節目をずらして何度も別れ直すしかないという感覚を拾い上げるところ。あるいは、誰も知らない居場所でだけ本音を吐けるというネットの描写。どれも、誰かに説明しようとしてもうまく届かない種類の痛みで、それを物語の形でそっと置いてくれているのがこの本だと思います。 物語の舞台はかなりしんどい状況なんですが、読後は「つらさってこうやって動くんだよね」と、少しだけ自分の内側の形が見えるような感じがあります。誰かの悲しみに触れているのに、自分の昔の景色が呼び起こされるような、そんな読み方をする本です。 自分の気持ちをうまく整理できずに、同じ場所をくり返し踏んでしまうタイプの人に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの31%が集中しています。
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