
深淵のテレパス
上條 一輝
東京創元社 / 2024-08-09
この本について
仕事でも日常でも、やれることは一応やったつもりなのに、状況が動かなくて焦ったり、無力感だけが残ったりする時ってありますよね。自分の判断が正しかったのか、もっと他に打ち手があったんじゃないかと逡巡ばかりして、前に進んでいる感じがしない。僕もそういう停滞の時間がけっこう長くて、気持ちだけが暗澹としていくことがよくあります。 『深淵のテレパス』を読んでいて印象に残ったのは、「全部やったか?」と自分に問う場面でした。答えがイエスなら、もうそこから先はあれこれ自責に走らず、果報を待つという姿勢に切り替えていい。これは放棄でも開き直りでもなく、必要以上に自分を追い詰めないための距離感なんだと思います。また、物語の中に散りばめられた習俗や道理といった言葉が、目の前の些末なことだけに気を取られがちな視界を少し広げてくれる感覚もありました。人物たちが臆面もなく心情をさらす場面は、自分ももう少し正直に揺れを受け止めていいのかもしれないと思わせてくれます。 過度なポジティブさで背中を押すタイプの本ではないですが、行動と気持ちの折り合いをどうつけるかに迷っている人にはしっくりくるはずです。こんな人に刺さると思います。やるべきことはやっているのに、心だけが置き去りになっているように感じる時の、静かな踏ん張りどころを探している人に。
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ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの28%が集中しています。
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