
古代オリエント全史 エジプト、メソポタミアからペルシアまで4000年の興亡 (中公新書)
小林登志子
この本について
歴史を学びたいと思っても、「今の情勢とどうつながっているのか」が見えにくくて、結局ニュースの表面だけを追ってしまうことってありませんか。中東に関する話題も、宗教や民族の名前だけが飛び交って、過去との地続き感がつかみにくいまま終わってしまうというか、僕自身ずっとその感覚がありました。 この本は、いまの混迷と古代の実態をつなぐ“地面”を丁寧に作ってくれる一冊でした。たとえば、アラブやイスラエルを語るときに同列で扱われがちな民族や言語が、そもそもどこで生まれどう移動したのか。抜粋にもあるように「セム語族」という共通点はあるけれど、当時の住民像は現代とはまったく別物だという視点は、ニュースを見るときの前提を静かに書き換えてくれます。また、灌漑や金属交易といった“文明の技術的な条件”から歴史を見ると、国境線や勢力図の変化も人格ではなく環境の必然として理解できて、モヤモヤが減ります。 さらに、楔形文字や都市の未発見部分など、歴史が“わかっていないまま残っている余白”も本書ははっきり示してくれます。中東の話題は確定した物語にされがちですが、実際は断片からつないでいるにすぎない。その謙虚な視点を持てるのが、この本の一番の効きどころかもしれません。 今の情勢を「ニュースの延長」ではなく「数千年スケールの地層の上」で見たい人に刺さると思います。
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