
くもをさがす
西加奈子
河出書房新社 / 2023-04-18
この本について
最近、人との距離感とか、自分の弱さとのつき合い方で「これでいいのかな」と立ち止まることが多い人に、「くもをさがす」はけっこう静かに効いてきます。強くあろうとして空回ったり、誰かへの情が手放せなかったり、幸せを感じている瞬間ほど不安がよぎったり。そういう揺れをごまかさずに言葉にしてくれる本です。 読んでいて特に刺さるのは、まず「弱さを認めることで輪郭がシンプルになる」という感覚です。強がらなくても、怖いものは怖いし、情けない気持ちの奥にちゃんと自分がいる。その当たり前さを、著者が病気や移住の体験を通して、淡々と、でも確かに示してくれます。もう一つは、「身体を取り戻す」という視点。流行や他人の目に合わせるうちに、自分の好みや心地よさがどこかへ行ってしまう感じって、多くの人が覚えがあるはずで、その感覚を解きほぐす描写が妙に胸に残ります。さらに、日本的な“情”とカナダで感じた“愛”の違いについての考察は、人との関わり方をもう一度見直すきっかけになります。どちらが良い悪いではなく、自分がどう在りたいかを静かに問い返される感じです。 派手な変化を求めている人よりも、「今の自分の揺れにちゃんと名前をつけたい人」にこそ届く本だと思います。読後に、自分の輪郭がほんの少しはっきりするような一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの30%が集中しています。
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